本記事は、相続の実務で揉めやすいポイントを日本の最新制度・公式情報に基づきチェックリスト化したものです。
特に不動産が絡む相続では、相続登記の申請義務(2024年4月1日施行)や、相続税の申告期限(原則10か月)など、期限の見落としがトラブルの典型要因です。該当箇所に根拠と一次情報のURLを付しました。
まず最初に:当てはまる人すべてに共通する重要期限
- 相続登記(不動産を相続した人)… 「相続による取得を知った日から3年以内」に申請が法律上の義務。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の可能性。法務省Q&A
- 住所・氏名変更登記(所有者が住所や氏名を変えた場合)… 2026年4月1日開始、変更日から2年以内に申請義務。違反は5万円以下の過料(予告)。法務省/特設ページ
- 相続税の申告・納付… 相続開始(通常は死亡)を知った翌日から10か月以内。国税庁 No.4205/申告期限の定義
チェックリスト:手続き・書類・揉めやすい論点
1. 相続人・法定相続分の確定
2. 金融資産の仮払い(当面資金の確保)
- 遺産分割前の預貯金の払戻し制度を理解:相続人単独で「各金融機関あたり上限150万円」まで払い戻し可(計算式:相続開始時預金額×1/3×その相続人の法定相続分)。全国銀行協会リーフレット/法務省資料
- より高額が必要な場合は、家庭裁判所の審判による仮払いも可(上限なし・必要性の疎明が要件)。裁判所(遺産分割調停)
3. 不動産の相続登記(義務・期限・ペナルティ)
- 申請義務:2024年4月1日施行。相続による取得を知った日から3年以内に相続登記を申請。正当な理由なく未申請で10万円以下の過料の可能性。法務省Q&A
- 住所・氏名変更登記の義務化(所有者)2026年4月1日開始、2年以内に申請、5万円以下の過料(予告)。法務省
- 名義放置の回避:放置は売却・融資・管理や固定資産税対応で支障の原因。早期の遺産分割協議書(または遺言)に基づく登記を。
4. 税務(基礎控除・期限・よくある抜け漏れ)
5. 遺留分(いりゅうぶん)への配慮
遺留分=兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた最低限の取り分。遺言で特定の人に偏らせると、遺留分侵害額請求の争いに発展しやすい。遺言作成時は遺留分侵害の有無・対策(代償金など)を事前検討する。法務局資料(ことばの説明)
6. 話し合いが難航したら(家庭裁判所の利用)
実務向けタイムライン(例)
- 0〜1か月:死亡届・葬儀、戸籍収集、遺言書確認(法務局保管の有無含む)、当面資金が不足なら仮払い制度を検討(上限150万円/金融機関、式あり)。
- 1〜3か月:財産目録作成、法定相続情報一覧図の申出、遺産分割の大枠整理。
- 4〜6か月:不動産の遺産分割方針決定→相続登記に必要な書類収集。相続税の申告要否判定。
- 〜10か月:相続税の申告・納付(必要な場合)。
- 〜3年:相続登記の申請義務を確実に履行(過料リスク回避)。
- 2026年4月以降:所有者の住所・氏名変更登記の申請義務(2年以内)に注意。
ミスを減らす書類セット(最低限)
- 戸籍一式(被相続人の出生~死亡まで連続)・相続人全員の戸籍
- 住民票の除票(被相続人)/相続人の住民票
- 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
- 預貯金・有価証券等の残高証明
- 遺言書(公正証書/法務局保管の自筆証書)
- 遺産分割協議書(印鑑証明付き)
- 法定相続情報一覧図の写し(任意だが強く推奨)
よくある質問(要点のみ)
Q1. 相続税は発生しない見込みでも申告が必要なことは?
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、特例適用のために「0円申告」が必要な場合あり。期限(10か月)内に要件確認を。国税庁 No.4205
Q2. 遺言書はどこに預けると安全?
自筆証書は法務局の保管制度を使うと、相続開始後の検認が不要で手続きが速い。法務省(保管制度)
Q3. 不動産の名義変更を放置したら?
2024年4月以降は相続登記が義務。知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の可能性。法務省Q&A
参考情報(一次情報・公式)
免責事項
本記事は2025年10月27日時点の公表資料をもとに作成しています。各制度の適用可否・必要書類・期限の起算点などは個別事情により異なる場合があります。最新情報は必ず一次情報(法務省・国税庁・裁判所等)で確認し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。記載のうち、各自治体の個別運用・窓口の実務細目については「確認できていません」。