本記事の目的:冬に空き家を放置したことで起きやすい「水道管の凍結・破裂」「漏水による高額請求」「侵入・放火などの防犯/火災リスク」を、自治体・警察・消防などの公的情報に基づき、手順とチェックリストに落とし込みます。
冬の空き家管理は、①水(凍結対策)②防犯(留守サイン除去)③火災(放火・通電火災の芽を潰す)の3点を「出発前に固定作業として完了」させるのが最優先です。水については「凍結防止帯を通電する」か「水抜き(不凍栓等)」のどちらかを選び、半端な状態を残さないことが重要です。
1. 冬の空き家で起きやすいトラブル(具体例)
- 凍結→破裂→漏水:気温が氷点下になると水道管内の水が凍り、氷になる際の膨張で管やメーターの破損につながる、と自治体が注意喚起しています。
- 問い合わせ・修理が集中:例として郡山市は、ある年度に「凍結353件・破裂251件(合計604件)」の問い合わせがあった旨を公表しています(全国値ではなく、あくまで一自治体の公表例です)。
- 留守がバレる→侵入:ポストに新聞が溜まる等は不在を悟られる原因になる、と警察が注意喚起しています。
- 放火リスク:住宅では施錠されていない箇所からの侵入放火や、新聞・ごみ等への放火に注意が必要だと消防が解説しています。
2. 凍結対策の考え方:凍結防止帯 or 水抜き
冬期の凍結対策は、設備と運用で選択肢が2つに分かれます。どちらを採るか決めたら、手順を最後まで完了してください(中途半端は漏水・破損リスクになります)。
- A:凍結防止帯(電熱ヒーター)を通電して守る
自治体は、凍結防止帯は「通電により管を暖めて凍結を防ぐ」ため、気温が下がる季節は早めに電源を入れるよう案内しています。電源が入っていないと効果が出ない旨も明記されています。
- B:不凍栓(水抜き栓)等で水抜きして守る
長期間不在になる場合、不凍栓による水抜きが有効だと自治体が案内しています。不凍栓が半開きだと漏水し、高額な水道料金になる可能性があるため、開閉は「止まるまで」行うよう注意喚起があります。
- 重要:凍結防止帯と水抜きを同時に行うと管を傷めるおそれがある、と自治体が注意しています。
用語
- 不凍栓(水抜き栓):配管内の水を抜くためのバルブ。長期不在時の凍結対策で自治体が案内しています。
- 凍結防止帯:水道管に巻くヒーター。通電して凍結を防ぎます。
- トラップ/封水:排水管の途中に溜まっている水(におい・害虫の逆流を防ぐ“水のフタ”)。ここが凍ると破損や悪臭原因になります。
3. 水抜き(不凍栓)の基本手順
不凍栓での水抜き手順は、自治体が次のように案内しています(蛇口の仕様により追加操作が必要な場合がある旨の注意もあります)。
- 不凍栓を右に「止まるまで」回して閉める
- 蛇口を「全開」にして水を抜く
- 復帰時:蛇口を閉めてから、不凍栓を左に「止まるまで」回して開く
注意:不凍栓が半開きのままだと、漏水し高額請求になる可能性があるため、必ず「きっちり開閉」するよう自治体が注意しています。
給湯器(ボイラー)・混合水栓などの水抜き:機種により操作が異なるため、自治体資料でも「販売店・施工業者に確認」とされています。本記事では、機種別の具体手順までは確認できていません(取扱説明書または施工業者で確認してください)。
4. トイレ・排水トラップの凍結対策(封水)
長期間使用しない場合について、自治体資料は次を明記しています。
- トイレ:ロータンクの水を抜いておく。
- 排水トラップ:シンク等の排水管内にあるトラップ(におい防止の水溜り)も凍結しないよう作業が必要。
- 不凍液:トラップに少量の不凍液を入れておくと凍結を防げる、と自治体資料に記載があります。
※不凍液の製品選定(用途・成分・排水可否)についての全国統一の指定は本記事では確認できていません。必ず製品表示・自治体/管理会社の指示に従ってください。
5. 凍った/破裂したときの応急対応(NG行動あり)
凍結して水が出ない
- 基本:自然に溶けるのを待つ(無理な操作は破損のおそれ)。
- 早く使いたい場合:凍結部分にタオル等をかぶせ、ぬるま湯をゆっくりかける。
- NG:熱湯を急にかける、直火を当てる(破裂のおそれ)。
破裂してしまった
- 止水:止水栓・水抜き栓(不凍栓)を閉めて水を止める。
- 応急:破裂箇所に布やテープを巻き付け、吹き出しを抑える(応急)。
- 修理:指定給水装置工事事業者など専門業者へ依頼(修理費は利用者負担となる旨を自治体が明記しています)。
6. 防犯:留守のサインを消すチェックリスト
空き家は「留守」と判断される情報が増えるほど狙われやすくなります。警察が明記している対策を中心に、空き家向けに落とし込みます。
- 新聞・郵便物を溜めない:新聞が郵便受けに溜まると留守を悟られるため、長期不在時は配達停止などを手配する(警察の注意喚起)。
- 合鍵を屋外に置かない:玄関周辺、郵便受け、鉢など敷地内でも屋外に合鍵を置かない(警察の注意喚起)。
- 足場になる物を外に置かない:脚立・ポリバケツ等は侵入の足場になり得るため庭に置かない(警察の注意喚起)。
- 施錠の徹底:窓・勝手口・物置など、侵入経路になりやすい箇所まで施錠確認。
7. 火災:放火・電気火災を防ぐチェックリスト
放火対策(屋外・外周)
- 可燃物を外周に放置しない:新聞・ごみ・段ボール等は放火の標的になり得るため、外周を整理整頓する(消防の解説)。
- 空き家・物置・車庫も施錠:侵入放火対策として施錠を徹底する(消防の解説)。
- ゴミ出しルール遵守:決められた日に出し、出しっぱなしを作らない(消防の解説)。
電気火災対策(屋内)
- 暖房器具を無人で通電放置しない:火災予防条例(例)では、電気を熱源とする器具を「通電した状態でみだりに放置しないこと」を規定している旨が紹介されています。
- 何を切るかを先に決める:「凍結防止帯で守る」運用を選ぶ場合、電源を落とすと効果が出ません(自治体が明記)。このため、空き家の電源を一律OFFにする前に、凍結対策の方式(A/B)を決めてください。
8. 法令メモ:空き家の「適正管理」と行政対応
空き家を適正管理しない場合、市町村が助言・指導・勧告・命令等を行える枠組みが法律として整備されています。国土交通省も、空家等対策の推進に関する特別措置法(関連情報)を公開しています。
※本記事は冬の実務(凍結・防犯・火災)に絞ったマニュアルです。個別物件が行政上どの区分(例:特定空家等)に該当するかは、現地状況と自治体判断によるため、本記事では確認できていません。
9. 出発前チェックリスト
- 凍結対策の方式を決める:(A)凍結防止帯を通電で守る/(B)不凍栓等で水抜きで守る
- (Bの場合)不凍栓の水抜きを完了:右に止まるまで→蛇口全開→水が抜けたこと確認→(復帰は逆手順)
- トイレ・トラップ:ロータンク水抜き/排水トラップ凍結対策(不凍液は製品表示で可否確認)
- 凍結時のNGを共有:熱湯・直火はNG。ぬるま湯をゆっくり(応急対応の掲示メモを室内に残す)
- 防犯(警察推奨):新聞停止・郵便物対策/合鍵を屋外に置かない/脚立等を外に置かない/全施錠
- 放火(消防推奨):外周の可燃物ゼロ/物置・車庫も施錠/ゴミはルール通り
- 通電管理:無人で暖房器具を通電放置しない(凍結防止帯の運用と矛盾しないよう整理)
参考情報
- 安曇野市「水道の冬期間の管理について(PDF)」https://www.city.azumino.nagano.jp/uploaded/attachment/32229.pdf
- 大町市「冬じたくで凍結防止に備えましょう」https://www.city.omachi.nagano.jp/00015000/00015200/00015215.html
- 諏訪市「水道管の凍結防止方法」https://www.city.suwa.lg.jp/soshiki/24/3604.html
- 郡山市「水道管の冬じたく(凍結の対策)」https://www.city.koriyama.lg.jp/site/jougesuidou/5551.html
- 警視庁「侵入窃盗の防犯対策」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/akisu/akisu.html
- 東京消防庁「第5章 火災の予防(放火対策の記載あり)」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/ts/bfc_manual/instructor/cp5.html
- 消防関係(NRIFD/消防庁系)「火気器具等の取扱い(火災予防条例例の解説)」https://nrifd.fdma.go.jp/news/caution/heat_generator/index.html
- e-Gov法令「空家等対策の推進に関する特別措置法」https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
免責事項
本記事は、自治体・警察・消防等の公開情報を基に、冬の空き家管理を手順化した一般情報です。水抜き・給湯器・暖房機器等の操作は機種や配管方式で異なるため、機種別の具体手順は本記事では確認できていません。必ず取扱説明書・施工業者・管理会社・自治体の案内に従ってください。不凍液の選定(用途・成分・排水可否)は製品により異なるため、本記事では一律の指定や排水可否を断定していません。法令運用(行政指導の対象該当性等)は個別事情と自治体判断によるため、本記事は法的助言ではありません。
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杜丸不動産
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